ロック史解説vol.1 ブルースからエルヴィス登場まで
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1.ロックの歴史(序章:ブルース〜R&B〜ロックンロール誕生)
1) 論旨(何を主張しているか)
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20世紀の録音技術(テープレコーダー等)の登場で、音楽は「楽譜の再現」から「個々の音色・声の個性」を評価する時代へ移行。
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ロックの根幹はブルースとR&Bにあり、黒人音楽の革新が白人社会に広まり、ロックンロールとして爆発した。
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伝統・土着・労働歌+西洋楽器・和声(コード)の接触が新しいポピュラー音楽を生み、やがてエルヴィス・プレスリーが“薄めない黒人音楽リスペクト”でゲームチェンジを起こした。
2) 歴史の流れ(時系列ハイライト)
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録音技術の普及
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テープレコーダー等により音色・声質が記録・流通可能に。スターの「声」「ギターの音」が価値化。
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ブルースの起源(社会背景)
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奴隷制期〜解放後:フィールド・ハラー/労働歌、教会音楽(賛美歌・ゴスペル)から派生。
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個人的な歌詞(恋・家賃・生活苦)が中心へ。独唱+楽器伴奏(ギター等)で“コード進行”が付与される。
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採集と記録(ローマックス親子)
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南部を録音行脚。レッドベリーなどを発掘・記録し、フォーク界にも橋を架ける。
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伝説のロバート・ジョンソン探索は叶わずも、代わりにマディ・ウォーターズを記録。
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大移動と都市化 → シカゴ・ブルース
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黒人の北部・都市への移住で、南部のサブカルが都市ポップへ。
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マディ・ウォーターズがシカゴでエレキ+バンド形態+ボトルネック奏法を推進=シカゴ・ブルース成立。
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エレキ・ギターの前史
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チャーリー・クリスチャン(ジャズ):アンプでギターを前面へ。エレキ普及の象徴的存在。
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R&Bの誕生と拡散
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当初の“Race Music”表記を改めR&Bチャートへ。ラジオ/レコード流通で白人層にも波及。
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チャック・ベリーやボ・ディドリーらが軽快でポップな語法を確立、メインチャートへ進出。
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“薄めるカバー”からの転換
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白人歌手によるマイルドな黒人曲カバーが流行する一方、
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エルヴィス・プレスリーが“薄めず”黒人音楽のソウル/グルーヴを体現し、社会現象級の大スターに。
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3) 重要キーワード/概念
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録音革命:演奏の再現性→音色・声の個性の流通。
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ブルースの三要素(講義の文脈):個人的歌詞/独唱+伴奏/コード付与。
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シカゴ・ブルース:エレキ化・バンド編成・都会的サウンド。
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R&B:呼称の転換(差別的“Race Music”からの脱却)とポップ化。
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文化交差点:黒人音楽の革新×白人社会の受容がロックの推進力。
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リスペクトの度合い:単なる模倣/薄めるカバー vs. 本質を保った再現(エルヴィスの転換点)。
4) 主要人物と役割
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ローマックス親子(アランほか):南部音楽の採集・録音・可視化。
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レッドベリー:膨大なレパートリーを持つ“生きる音楽博物館”、フォーク側への橋渡し。
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ロバート・ジョンソン:デルタ・ブルースの象徴(探索は未達)。
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マディ・ウォーターズ:エレキ導入・ボトルネック・バンド化→シカゴ・ブルースの核。
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チャーリー・クリスチャン:ジャズにおけるエレキ・ギターの前面化。
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チャック・ベリー/ボ・ディドリー:R&Bをポップに押し広げ、メインチャートへ。
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エルヴィス・プレスリー:黒人音楽の本質を“薄めず”体現し、ロックンロールを社会現象化。
5) 因果関係(まとめ図式)
録音技術の普及
→ 個性(声・音色)の評価 → ブルース(個人的歌詞+コード付与)
→ 採集・記録で可視化 → 都市化・エレキ・バンド化(シカゴ・ブルース)
→ R&Bとして名称・流通整備 → 白人層へ拡散
→ “薄めるカバー”の時代
→ エルヴィスが本質を保持した体現により爆発的普及
→ ロックンロールの成立
6) 本編での示唆・学び
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ロックはマルチカルチャーの産物であり、社会構造(差別/移住/メディア)と技術(録音・電化)の交点で生まれた。
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“音楽理論×土着的表現”の接触がイノベーションを生む。
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文化受容では本質への敬意が広がりの質を決める(エルヴィスのケース)。
7) 次回予告(講義の流れ)
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エルヴィス後〜英米ロックの拡大、ビートルズ登場までを扱う旨の示唆。
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プレイリストにはサン・ハウス/ハウリン・ウルフ/T.ボーン・ウォーカー等の名が挙がる予定。
一言要約
録音技術の革新と黒人音楽(ブルース/R&B)の都市化・電化が、エルヴィスの“薄めない”体現を経てロックンロールを誕生させ、ポピュラー音楽の地図を塗り替えた——という序章。
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ロック史解説vol.2 音楽が死んだ日!? ロカビリー全盛そしてフィル・スペクターの登場
2.ロックンロール黄金期の失速〜ビートルズ登場前夜
1) 論旨(主張)
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エルヴィスを起点にロックンロールは一大ブームとなるが、58〜59年の事件・スキャンダル・制度的圧力で失速。
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その空白期にソウル、ガールグループ、プロデューサー主導のポップが台頭し、ビートルズ登場の下地が整う。
2) 時系列ハイライト
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ロックンロール黄金期(〜1957)
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先頭:エルヴィス・プレスリー。
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同時代スター:ジェリー・リー・ルイス、カール・パーキンス、バディ・ホリー。
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黒人側:チャック・ベリー、ボ・ディドリー、ドゥーワップ系コーラス・グループ。
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失速(1958–1959を中心)
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リトル・リチャード:飛行機事故の恐怖をきっかけに牧師転向→引退宣言。
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エルヴィス:徴兵で第一線離脱、復帰後は映画比重増。
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ジェリー・リー・ルイス:13歳妻スキャンダルで人気失墜。
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バディ・ホリー:飛行機事故死(22歳)。
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チャック・ベリー:未成年同伴問題で逮捕。
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ペイオラ(賄賂)・スキャンダルでDJアラン・フリード失脚=ロック露出の要が崩れる。
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“冬の時代”の音楽地図(1960年前後)
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ティーン・ポップ/オールディーズ系(ニール・セダカ等)に主流が移動。
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ガールグループ、ドゥーワップがヒット。
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ソウル誕生・確立:レイ・チャールズ(ゴスペルの世俗化)、後にアレサ・フランクリンへ。
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フォーク・リバイバルの芽:ローマックス親子の採集→レッドベリー→白人フォーク陣(ピート・シーガー等)→のちのディランの土壌。
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プロデューサー時代の到来
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フィル・スペクター:「ウォール・オブ・サウンド」で音色/録音方法そのものを“作家性”に。
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「誰が歌うか」だけでなく「誰が録るか」が価値に。巨大編成・一発録り・女声ボーカル起用でヒット連発。
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英国からの反転力の形成
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商業的で“お行儀の良い”ポップが主流化する中、カウンターとしての新風が求められる。
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その空気の中でビートルズが出現し、次章(ブリティッシュ・インヴェイジョン)へ。
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3) キー概念
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事件と制度が市場を冷やす:スター離脱+スキャンダル+ペイオラ取り締まり。
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主導権の移行:アーティスト中心 → プロデューサー中心(録音美学の台頭)。
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ジャンルの分岐進化:ロックの一時後退中にソウル/ガールグループ/フォークが前進。
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需要の揺り戻し:整いすぎたポップへの反動が新しいロックの衝動を呼び込む。
4) 主要人物と役割
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エルヴィス・プレスリー:初の超弩級ロックスター(徴兵で離脱)。
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リトル・リチャード:牧師転向で引退宣言。
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ジェリー・リー・ルイス:未成年婚スキャンダル。
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バディ・ホリー:事故死で象徴的喪失。
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チャック・ベリー:逮捕で活動停滞。
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アラン・フリード:ペイオラで失脚(ロック普及の要の崩壊)。
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レイ・チャールズ/アレサ・フランクリン:ソウルの礎。
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ローマックス親子/レッドベリー:フォーク/ルーツ回帰の回路を形成。
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フィル・スペクター:ウォール・オブ・サウンドで音作り=作家性を確立。
5) 因果関係(簡易フロー)
スターの離脱・不幸 + スキャンダル + ペイオラ取り締まり
→ ロック露出減・求心力低下
→ ティーンポップ/ガールグループ/ソウル/フォークが台頭
→ プロデューサー美学(録音・音色)が主導
→ “反動待ち”の空気が醸成
→ ビートルズ登場の下地完成
6) 一言要約
事件と制度がロックンロールの勢いを止め、代わりに“録音美学”とソウル/フォークが伸びる。その空白と反動が、やがてビートルズによる再爆発を呼び込む。
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ロック史解説vol.3 ビートルズの登場とロックの多様化
3.ビートルズ登場〜サイケ/広がるロック(1962–69)
1) 論旨(主張)
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英米ポップの勢力図をビートルズの台頭が塗り替え、ブリティッシュ・インヴェイジョンが本格化。
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自作自演・高度な和声感・録音実験の革新が、アルバム志向(コンセプト化)とサイケデリック期を牽引。
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同時期、モータウン/ビーチ・ボーイズ/フォーク運動/ハードロック萌芽/アート志向のオルタナが並走し、60年代末に**ウッドストック(熱狂)→オルタモント(反動)**で一段落。
2) 時系列ハイライト
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英バンドの米進出(1963–64)
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それまで「英ポップは米国で不発」→ビートルズが突破、続きローリング・ストーンズ/キンクス/フーらが続々上陸=ブリティッシュ・インヴェイジョン。
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ビートルズの革新(デビュー〜『リボルバー』)
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自作自演(ジョン&ポール)で若者の視点を楽曲化。
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早期から従来にない和声・コード運用を導入→クラシック界からも評価。
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録音・編集・効果音・テープ逆回転等でスタジオを創作道具化(『Revolver』)。
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アルバム志向の確立(『Sgt. Pepper’s…』, 1967)
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コンセプト・アルバムの象徴:曲を“物語/一体”として聴かせる発想を普及。
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テーマは愛・平和へ傾斜、フラワー・ムーブメントと共振。
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米側の対抗軸・並走潮流(60年代中盤)
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モータウン(ベリー・ゴーディ):ブラック・ミュージックのポップ化・越境流通(スプリームス、スティーヴィー等)。
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ビーチ・ボーイズ:サーフ+精緻コーラス→西海岸サウンドの礎、ビートルズと相互刺激。
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フォーク/ protest:ボブ・ディランが社会的歌詞で時代を射抜き、ビートルズとも相互影響(歌詞深化⇄電化志向)。
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サイケデリック〜ハードロック萌芽(1966–69)
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LSD文化と対抗文化の広がり、サイケ・ロックが隆盛。
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ジミ・ヘンドリックス/クリームらが大音量・歪み・ロングソロでハードロック原型を提示。
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ブルース回帰(フリートウッド・マック初期など)も並行。
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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド:アート/実験志向、後のオルタナ/パンクの源流に。
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60年代の頂点と転機(1969)
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ウッドストック:愛と平和の到達点。
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直後のオルタモント:暴力沙汰で理想主義に陰り→サイケ期の終焉の象徴。
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3) 何が革新的だったか(要点)
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自作自演の標準化(ビートルズ影響で同時代バンドも作曲へシフト)。
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録音=作家性の時代(スタジオ実験・プロデューサー/エンジニアの創作参加)。
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アルバム単位の芸術性(コンセプト化・全体設計)。
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ジャンル横断の並走:モータウンの越境ヒット、フォークの社会性、サイケの拡張性、ハードロックの音像、オルタナの前史。
4) 主要人物・組織(役割)
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ビートルズ:自作自演+和声革新+スタジオ実験/『Revolver』『Sgt. Pepper’s』。
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ローリング・ストーンズ/フー/キンクス:英ロック多様化を牽引。
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モータウン(ベリー・ゴーディ):ブラック音楽のポップ市場拡張。
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ビーチ・ボーイズ(ブライアン・ウィルソン):西海岸コーラス美学。
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ボブ・ディラン:社会的言説をロックに接続、電化でロックの言葉を更新。
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ジミ・ヘンドリックス/クリーム(クラプトン):大音量・歪み美学→ハードロック原型。
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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド:アート/実験志向の源流。
5) 因果関係(簡易フロー)
英ポップ不振 → ビートルズ突破 → 英勢の米席巻(インヴェイジョン)
→ 自作自演・録音実験の連鎖的普及 → アルバム志向/コンセプト化
→ サイケ拡大+社会運動の接続 → 1969ウッドストックで頂点
→ オルタモントで理想に陰り → 70年代の新局面へ
6) 一言要約
ビートルズが開いた“作る・録る・まとめる”革新(自作自演/スタジオ実験/アルバム芸術化)が、60年代の多彩なロック潮流を爆発させ、ウッドストックで頂点、オルタモントで転機を迎えた。
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ブリティッシュ・インヴェイジョン
定義と象徴
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定義:1960年代半ば、イギリスのロックやポップ音楽・文化がアメリカを席巻した現象。
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代表バンド:ビートルズ、ローリング・ストーンズ、デイヴ・クラーク・ファイヴ、キンクス、アニマルズ、ハーマンズ・ハーミッツ。
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文化的背景:アメリカとイギリスでカウンターカルチャーが勃興。
背景
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1950年代末:アメリカのロックンロールやブルースがイギリスの若者に人気。
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スキッフルの流行:DIY的な音楽スタイルが広がる。
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マージービート:リヴァプールを中心にビートブームが起こる。
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若者文化:モッズとロッカーズという若者グループの登場が音楽に影響。
展開
ビートルマニアの誕生
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1963年:ビートルズ人気がイギリスからアメリカへ報道され始める。
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1963年末:「抱きしめたい」放送が口コミ的に全米に広まり、爆発的ヒット。
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1964年2月:エド・サリヴァン・ショー出演で視聴者7,300万人、全米熱狂。
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Billboard Hot 100で1〜5位を独占するなど、前代未聞の成功。
他のアーティストの台頭
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ダスティ・スプリングフィールド(ブルー・アイド・ソウル)。
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ホリーズ、ゾンビーズなどポップロック派。
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ローリング・ストーンズ、アニマルズなどブルース志向派。
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1965年:全米チャートの多くをイギリス勢が独占。
音楽的特徴と影響
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初期のアメリカン・ロックンロールを再解釈。
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ブルースやR&Bを再評価させ、若者に広めた。
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ローリング・ストーンズ:ビートルズに次ぐ重要バンド。
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1967年頃:ロックが世界的ジャンルとして確立し、インヴェイジョンは終焉へ。
アメリカ音楽への影響
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カウンターカルチャーが主流化。
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サーフミュージック、ガールグループ、フォークリバイバルの衰退。
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アメリカのガレージロックバンドが影響を受け、新世代ロックへ。
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ロックの形態確立:ギターとドラム中心、自作曲を歌うシンガーソングライター型。
音楽以外の文化的影響
映画・テレビ
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ビートルズ映画『A Hard Day’s Night』。
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『メリー・ポピンズ』『マイ・フェア・レディ』『アラビアのロレンス』など英国映画がアカデミー賞を席巻。
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007シリーズや英国製スパイ・ドラマが人気。
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アメリカ番組も音楽主体の新フォーマットに転換。
ファッション
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ビートルズの揃いのスーツ → アメリカ男性ファッションに刺激。
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スウィンギング・ロンドンのモッズ風、ミニスカート(マリー・クヮント、ツイッギーなど)が世界的流行。
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ヒッピーファッションへの変化もアメリカに波及。
まとめ
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ブリティッシュ・インヴェイジョンは音楽だけでなく映画、ファッション、テレビなど広範囲に影響を及ぼし、
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アメリカ文化を刷新し
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ロックを世界的ジャンルへ確立させた。
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ビートルズを中心とするこの動きは、1960年代の若者文化・反体制文化を象徴する現象となった。
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ロック史解説vol.4 ハードロック、プログレそしてパンクの登場
4.70年代前半〜パンク誕生まで(ビートルズ解散後の地殻変動)
1) 論旨(主張)
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ビートルズ解散(1970)で60年代の章が閉じ、サイケの余熱からハードロックとプログレが二大潮流に発展。
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同時並行でルーツ回帰/カントリー・ロック/SSW(シンガーソングライター)、ブラック側ではファンク、ジャズでは電化〜フュージョンが進化。
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ロックの巨大産業化への反発として、NY発→UKで爆発するパンクが登場し、ロックを“原点回帰/再起動”させた。
2) 時系列ハイライト
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1970前後:転換点
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ビートルズ解散。サイケの先にハードロック(大音量・歪み・即興)とプログレ(長尺・コンセプト・技巧)が分岐成長。
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ハードロックの定着〜重厚化
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代表:Led Zeppelin/Deep Purple/Black Sabbath(英“御三家”)。米ではGrand Funk Railroad/Aerosmithら。
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のちのメタル/グランジ/ストーナー等へ連なる原型を形成(特にSabbath)。
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プログレの勃興(チャートでも主流)
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代表:Pink Floyd/Yes/King Crimson/Genesis。
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シンセ普及、LP片面曲など“アルバム芸術”を極大化。
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ルーツ回帰とカントリー・ロック
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Stonesのブルース回帰、『The Band』、CCR、Claptonの土臭い路線。
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Byrdsに加入したGram Parsonsがカントリー・ロックを推進。
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SSW(シンガーソングライター)/“ソフトロック”系(英語圏用法)
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Carole King/James Taylor/Elton John/Cat Stevensらが自作自演で大衆化。
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ブラックミュージック:ソウル→ファンク→アルバム志向
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James Brownが全パートをリズム化=ファンク誕生。
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Sly & The Family Stoneがロックと交差。
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Marvin Gayeがセルフプロデュースと社会派コンセプト・アルバムで“アルバム主義”を黒人音楽へ導入。
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ジャズの電化とフュージョン前夜
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Miles Davisが電化(『In A Silent Way』『Bitches Brew』)→フュージョンの母体に(キース・ジャレット、ジョン・マクラフリン、ビリー・コブハム等が派生系を確立)。
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グラム・ロック(英)
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派手な装いとポップ/ハードの折衷:T. Rex(マーク・ボラン)/David Bowie、周辺にRoxy Music/Mott the Hoople/Lou Reed。
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反動の胎動〜プロト・パンク
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産業化・巨大化するロックへの違和感。Stooges/MC5らが粗剛で攻撃的なロックを提示。
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パンクの成立(〜1977)
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**NY(CBGB)**発:Ramones/Television/Patti Smith/Talking Heads/Blondieなど(“カバー禁止”のオリジナル志向)。
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影響が英へ飛び火。Sex Pistols(マルコム・マクラーレン仕掛け)やThe Clash/The Damned/Buzzcocksが社会・体制を正面から挑発。
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過激なメッセージと簡潔なサウンドで“ロックの再起動”を果たすが、オリジナルのパンク期自体は短命。
3) トピック別キーポイント
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ハードロック:大音量/歪み/長尺ソロ。メタル系の源流。
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プログレ:長尺・変拍子・物語性・シンセ。アルバム芸術の極北。
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ルーツ回帰:ブルース/カントリーへ戻る“土臭さ”の復権。
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SSW:個の表現が大衆に浸透。
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ファンク:リズムの再定義が後のヒップホップの礎に。
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電化ジャズ:ロックと相互浸透→フュージョン誕生。
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グラム:視覚戦略+ポップ感。
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パンク:商業化へのアンチテーゼ/簡素・即効・直接的。
4) 主要人物(役割)
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Zeppelin/Purple/Sabbath:ハードロック様式化・重金属の胎動。
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Pink Floyd/Yes/Crimson/Genesis:プログレ拡張。
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The Band/CCR/Clapton/Gram Parsons:ルーツ/カントリー・ロック。
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Carole King/James Taylor/Elton John/Cat Stevens:SSW隆盛。
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James Brown/Sly/Marvin Gaye:ファンク・アルバム主義・社会性。
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Miles Davis:電化〜フュージョンの起点。
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T. Rex/David Bowie:グラム旗手。
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Stooges/MC5 → Ramones/Pistols/Clash:プロト〜パンク確立。
5) 因果関係(簡易フロー)
サイケの余熱
→(拡大)ハードとプログレが主流化/ロックの産業化
→(反動)ルーツ回帰・SSW/粗剛なプロト・パンク
→(臨界)NYのDIYムーブ → UKでパンク爆発
→ ロックを簡潔・直接・反権威へリセット
6) 一言要約
70年代前半は“肥大化と精緻化”(ハード/プログレ)と“素朴への回帰”(ルーツ/SSW)が綱引き。ブラックはファンクで再定義、ジャズは電化。やがて産業化への反発がNY→UKのパンク爆発に結実し、ロックは再び尖った牙を取り戻した。
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ロック史解説vol.5 パンクが落ち着きロックは死んだのか?
5.ポスト・パンク/ニューウェーブ〜80年代前半(ロックは「死んだ」のか?)
1) 論旨(主張)
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パンクの“破壊”後、ロックは終わらずに再編:
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ポスト・パンク(実験・反復・暗色の知性)
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ニューウェーブ(シンセ/ポップ感/多文化吸収)
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同時期にメタルの大衆化、MTV登場による映像主導、ハードコア/インダストリアルの地下深化が進行。
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80年代後半〜90年代のオルタナ/ミクスチャーへの土台が形成された。
2) 時系列ハイライト
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1978前後:パンク沈静化→再編
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ポスト・パンク:Public Image Ltd, Gang of Four, Wire, The Fall, 初期U2 など。
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ニューウェーブ:The Cars, The Police(レゲエ導入), Blondie, XTC, Elvis Costello, Depeche Mode, The Smiths, The B-52’s ほか。
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源流/技術的転回
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独クラウトロック(Kraftwerk, Can, Tangerine Dream)→電子音楽の骨格。
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デヴィッド・ボウイのベルリン期(イーノ/フリップら)→実験性がNWへ波及。
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シンセの低価格化で電子サウンドが急拡大。
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派生と極端化(アート寄りの地下)
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No Wave(NY:Lydia Lunchら/コンピ『No New York』)。
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Industrial(Throbbing Gristle, Ministry)→後年NINへ連結。
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メインストリームの転換(1981〜)
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MTV登場で“映像=ヒットの鍵”。
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ニューロマンティック(Duran Duran, Culture Club, Japan 等)が映像戦略で台頭。
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**マイケル・ジャクソン『Thriller』**がMV時代を決定づける。
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米国での力学:パンク不発→メタル躍進
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Van Halenの衝撃(タッピング)→LAメタル隆盛。
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英では NWOBHM(Iron Maiden, Saxon, Def Leppard)=パンクの疾走感を取り込んだ新世代メタル。
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世界規模で AC/DC, Scorpions なども大ヒット。
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地下の継続と過激化(80s前半〜中盤)
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USハードコア:Black Flag, Minor Threat(ストレート・エッジ), Bad Brains, Misfits, 初期Beastie Boys など。
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スラッシュ/エクストリーム・メタル胎動:Metallica, Megadeth, Slayer, Anthrax(湾岸〜SF圏)。
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3) キー概念
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“死”ではなく分岐:破壊(パンク)→再構築(PoP/NW)。
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電子化と可視化:シンセ低価格化+MTVで音色と映像が主導権を獲得。
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二極化:地上(NW/ポップ/メタル大衆化)と地下(HC/Industrial/No Wave)が並走。
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越境:レゲエ/ファンク/ワールド要素の積極吸収。
4) 代表アクト(役割)
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ポスト・パンク:PIL/Gang of Four/Wire/The Fall/初期U2。
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ニューウェーブ:The Cars/The Police/Blondie/XTC/Elvis Costello/Depeche Mode/The Smiths/The B-52’s。
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電子の源流:Kraftwerk/Can/Tangerine Dream/(橋渡し)Bowie+Eno。
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MTV/ニューロマンティック:Duran Duran/Culture Club/Japan/(頂点)Michael Jackson。
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メタル:Van Halen/LAメタル勢、NWOBHM(Iron Maiden, Saxon, Def Leppard)/AC/DC/Scorpions。
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ハードコア/極端化:Black Flag/Minor Threat/Bad Brains/Misfits/Metallica ほか。
5) 因果関係(簡易フロー)
パンクの破壊 → PoP/NWで再構築(電子化・多文化化)
+(並走)HC/No Wave/Industrialの地下深化
+(米主流)メタル大衆化(Van Halen→LA、英NWOBHM)
→ MTV時代で映像がヒットを牽引
→ 80s後半〜90s オルタナ/ミクスチャーの地盤に
6) 一言要約
“ロックは死んだ”のではなく、電子化と映像化で姿を変え、上はニューウェーブ/メタル、下はハードコア/インダストリアルへと枝分かれし、次のオルタナ時代への土台を築いた。
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ロック史解説最終回 オルタナの興隆からニルヴァーナの登場
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