2026年8月16日日曜日

8/16 ☆彡ソナ・ジョバルテ Badinyaa Kumoo(バディニャー・クモー)

 



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


SONA JOBARTEH & BAND - KORA MUSIC FROM WEST AFRICA- 2022

YouTube 

ソナ・ジョバルテ&バンド - 西アフリカのコラ音楽

 音楽は偉大な天恵である。それは私たちを高め、解放する力を持つ。人々に夢を見る自由を与え、ひとつの声となって歌うよう団結させてくれる。それこそが音楽の価値である。
―― ネルソン・マンデラ

ソナ・ジョバルテは、フランツ・リスト・ヴァイマル音楽大学および同大学のユネスコ・トランスカルチュラル音楽研究(TMS)講座の招きにより、ヴァイマルで公演を行いました。TMS講座では、音楽学専攻の学生たちにインスピレーションと交流をもたらすため、定期的にアーティストを招聘して多様な音楽文化に触れる機会を提供しています。

ソナ・ジョバルテは、西アフリカのグリオ(伝統伝承音楽家)家系出身として初の女性コラ奏者(ヴィルトゥオーソ)です。コラは、西アフリカ(ガンビア、セネガル、マリ、ギニア、ギニアビサウ)のマンディンカ族に属する最も重要な楽器のひとつです。代々グリオの家系のみに継承される楽器であり、伝統的にはその家系に生まれた男性だけがプロとして演奏する資格を持っていました。ソナ・ジョバルテは、アフリカ音楽のさまざまなジャンルと西洋音楽の要素を融合させています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

→ music Sona Jobarteh → アルバム Badinyaa Kumoo


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Badinyaa Kumoo

 music Notion bandcamp



 ChatGPT 

Sona Jobarteh(ソナ・ジョバルテ)— Badinyaa Kumoo

7

これはかなり面白いアルバムです。単に「西アフリカの伝統音楽を現代化した作品」というより、**コラを中心に、教育・植民地主義・女性・戦争・アフリカの歴史・人間性を論じる“音楽による社会思想”**になっています。

しかもユッスー・ンドゥール、バラケ・シソコ、カーク・ウェイラムら豪華なゲストが、それぞれ違う方向から音楽を広げています。

日本のAmazon Musicにも12曲版があります。

Amazon Music『Badinyaa Kumoo』

アーティスト:Sona Jobarteh(ソナ・ジョバルテ)

ソナ・ジョバルテは、ガンビア系イギリス人のコラ奏者、歌手、作曲家、教育者です。

最大の特徴は、西アフリカのマンデ社会で何世代にもわたって受け継がれてきたグリオ(ジャリ)の音楽家一族Jobarteh家に生まれ、男性中心だったコラの職業的伝統の中で女性奏者として活動してきたことです。

ただし彼女を「女性コラ奏者」という一点だけで見ると、このアルバムの本質を見失います。彼女自身がコラだけでなく、ギター、ベース、打楽器、ピアノ、チェロなど多数の楽器を担当し、多くの曲を自ら作曲・プロデュースしています。公式クレジットを見ると、本作はかなり強くソナ自身が設計した作品だと分かります。

さらに彼女はガンビアで教育活動を行っており、その思想が本作、とりわけ「Fondinkeeya」に直接つながっています。


アルバム:Badinyaa Kumoo

Badinyaa Kumoo(バディニャー・クモー)
2022年9月23日発売/全12曲/約72分。Amazon MusicではAfrican Guild Recordsからのリリースとして掲載されています。

ジャンルとしては、

マンデ音楽/西アフリカ音楽/ワールドミュージック/アフロ・フォーク/現代アフリカ音楽

あたりが近いでしょう。

しかし音楽的にはかなり幅があります。

コラ、バラフォン、ジェンベ、サバール、カラバッシュなどの西アフリカ楽器に、ギター、ベース、ドラム、ブラス、サックス、ハーモニカ、弦楽器、ピアノまで組み合わせています。

そのため「伝統音楽の保存」ではなく、

伝統を使って、現在のアフリカを語る

アルバムと考えると非常に分かりやすいです。


全曲解説

1. Musolou — 「女性たち」

タイトルの意味は Women(女性たち)

アルバム冒頭からテーマは明確です。

ソナは女性同士が互いの成功を妬むのではなく支え合うこと、そして女性への教育が社会全体の発展に必要だと訴えます。

さらにマヤ・アンジェロウ、ハリエット・タブマン、アンジェラ・デイヴィス、ミリアム・マケバ、ンドンゴ/マタンバのンジンガ女王、ダホメの女性戦士など、アフリカおよびアフリカ系女性たちに敬意を表しています。

音楽的にもコラだけではなく、バラフォン+ジェンベ+ベース+ギター+ドラムという厚い編成。

アルバムの「宣言」にあたる曲です。

楽曲の声明文 bandcampより

 この曲は、全人類が女性から生まれてくるという事実、そして何があっても次の世代を守るために闘い、犠牲を払う母の愛には何ものも及ばないという事実に敬意を捧げるものです。私は、あらゆる犠牲とたゆまぬ努力を惜しまない世界中の尊い女性たちに深く感謝します。

しかし、私は問いかけます。社会は、女性たちが人類のために払ってきた懸命な努力と犠牲に対して、一体どのように報いているでしょうか。女性たちは支配され、声を奪われ、抑圧され、殴打され、身体を傷つけられています……私たちをこの世に生み落とし、育ててくれたまさにその人たちを傷つけるとは、一体どういう人間なのでしょうか。

私は世界中の人々に、女性たちの側に立ち、女性とその尊厳のために闘ってほしいと願います。男性たちには、変革のために立ち上がり、未来の世代の男性となる幼い少年たちを正しく導き教育するよう直接呼びかけます。そして女性たちには、互いの成功を惜しみなく支え合い、嫉妬心を捨て去るよう強く求めます。すべての国民が国家の発展に主体的に参加できるようにするためには、女性への教育を徹底しなければなりません。

ここに、過去から現在に至るまで社会変革のために闘ってきた、アフリカにルーツを持つ象徴的な女性ロールモデルたちへ敬意を表します。

マヤ・アンジェロウ|マルーンのクイーン・ナニー|ヤー・アサンテワー|ンドンゴとマタンバのンジンガ女王|アンジェラ・デイヴィス|エレン・ジョンソン・サーリーフ|ハリエット・タブマン|ムブヤ・ネハンダ|ジゼル・ラベサハラ|ミリアム・マケバ|ローズ・チバンボ|マーガレット・エクポ|ソジャーナ・トゥルース|アンドレア・ルア|ダホメの女性戦士たち

世界中の女性たちに、心からの感謝を。



2. Dunoo — 「責任」

Dunoo = Responsibility(責任)

息子のMusa Filly Jobartehとの共演。

ここでソナが問いかける相手は音楽家・芸術家です。

「アーティストには社会的影響力がある。だから自分が何を発信しているのか考える責任がある」という内容です。

女性蔑視、富への崇拝、暴力や強欲を格好いいものとして若者に伝えるのではなく、次世代の模範となるべきだという、かなり直接的なメッセージです。

伝統音楽を「昔の文化」として扱うのではなく、現代社会を動かすメディアとして音楽を捉えているところが重要です。


3. Kambengwo — 「団結」

Kambengwo = Unity(団結)

ここで登場するのがセネガルの大スター、ユッスー・ンドゥール

Youssou N'Dour

本作でも特にスケールの大きい8分半の曲です。

ソナのコラとリズムギターに、サバール、ジェンベ、タマ、コンガ、マリンバ、トランペット、サックスまで投入。

タイトル通り「団結」を、音楽そのものの構造で表現したような曲です。

ガンビアのマンデ音楽+セネガルの音楽文化+現代的バンドサウンドが一つになっていきます。


4. Ballaké — バラケ

マリを代表するコラ奏者、バラケ・シソコとのコラ共演。

Ballaké Sissoko

ここはアルバムの中でも特に注目したい曲です。

社会的メッセージの強い曲が並ぶ中で、**二人のコラ奏者による“会話”**が前面に出ます。

ソナとバラケの二台のコラにソナのギターという非常にシンプルな編成です。

片方が語りかけると、もう片方が返す。

コラを「伴奏楽器」としてではなく、二人の人間が言葉なしで話しているように聴くと、とても面白い曲です。


5. Fondinkeeya — 「若者」

Fondinkeeya = Youth(若者)

本作の核心の一つ。

テーマは教育と脱植民地化です。

独立しても教育制度の中では外国の歴史・文化・言語ばかりを学び、自分たち自身の文化・歴史・言語が学校から排除されているのではないか、と問いかけます。

そして「自分自身の文化と歴史を子どもに教えること」が未来につながると主張します。

さらにコーラスを担当しているのがGambia Academyの生徒たち

つまり歌詞で教育を論じるだけではなく、実際に子どもたちを音楽制作へ参加させている

思想と演奏が一致しているところが非常に重要です。


6. Kafaroo — 「罪の赦し」

Kafaroo = Forgiveness of Our Sins(私たちの罪の赦し)

Ravid Kahalaniとの共演。

本作でも特に重い曲です。

戦争によって命を奪われる子どもたちと、その背後で利益を得る権力や経済構造を描いています。

コラ、カラバッシュ、ギターだけでなく、ヴァイオリン/ヴィオラと合唱が加わることで、ほとんどレクイエムのような重さがあります。

このアルバムの中では、宗教音楽的な祈りに最も近い瞬間の一つです。

声明文と歌詞和訳 bandocampより

楽曲へのステートメント

この曲は、戦争の悪害に対する祈りであり、権力と金銭を追い求め続ける人間の果てしない欲望が生み出した紛争のただ中に生まれ落ちた、罪なき子どもたちの決して許されることのない痛みと苦しみへの哀歌です。私は、人生が始まる前に奪われてしまった、私たちにとって最も尊い宝物である命を悼みます。戦争という悪を犯す人類の許しを祈り、人権という仮面の陰に隠れながら戦争の利益を享受し続けるこの世界の国家たちの偽善に対し、許しを乞います。

歌詞

あの子は知らなかった
おもちゃが 爆弾だったなんて
その清らかさも 無垢な心も
苦痛のなかで 引き裂かれてしまった
あの子が何をしたというのだろう
こんな仕打ちを受けるほどのことを
小さな体で 必死に息を吸おうとする
死の毒に侵された空気を
権力と金のために 犠牲にされた命

私は泣き叫ぶ
心は焼けただれ
魂は深く嘆く
救い出したまえ
この世界から 彼らを

すべての痛み
すべての残酷な苦しみ
神から授かった宝物は 破壊された
ただ強欲のために
愛しい子よ
おやすみ 目を閉じて
あなたの死が
権力渦巻く大都市の通りに 富をもたらすのだから



7. Ubuntu — 「人間性」

Ubuntu = Humanity(人間性)

南部アフリカで知られる「Ubuntu」の思想――

人は他者との関係によって人間になる

という考え方を中心にした曲。

戦争や暴力で家族を失う人々を「遠い国のニュース」にしてはいけない。同じ痛み、愛、喪失を持つ人間なのだ、と歌います。

ズールー語詞にはEugene Skeefが参加。

マンデ文化から一歩広がって、アフリカ全体の思想へ接続する曲です。


8. Gambia — 「ガンビア」

ここは文字通り、ソナにとって重要な土地ガンビアを前面に出した曲。

コラだけでなく、ジェンベ、サバール、セロバなど複数の西アフリカ系打楽器が入り、Usman Kanutehのギターソロも登場します。

アルバムの社会的・政治的テーマの中で、ここは**「自分はどこから来たのか」**という原点に戻るような位置にあります。

前半が社会への問いかけなら、ここから後半は「アイデンティティ」「記憶」「歴史」へさらに深く潜っていく、と考えると流れが見えます。


9. Nna Kangwo — 「私の声」

Nna Kangwo = My Voice(私の声)

ここで突然面白い楽器が登場します。

Jock Webbのハーモニカです。

コラ中心の西アフリカ的な音響にブルースを思わせるハーモニカが入り、アフリカとアフリカ系アメリカ音楽の距離が一気に縮まります。

「私の声」というタイトルとハーモニカの組み合わせも面白く、楽器そのものがもう一人の歌手のように聞こえてきます。


10. Nna Mooya — 「私たちの魂/精神」

Nna Mooya = Our Spirit(私たちの精神)

ゲストはアメリカのサックス奏者カーク・ウェイラム

Kirk Whalum

この曲も本作の核心です。

奴隷制、植民地主義、人種差別によって奪われてきた歴史・アイデンティティを背景に、それでも精神までは壊すことができないという抵抗の歌になっています。

ここでカーク・ウェイラムのサックスが入る意味は大きい。

西アフリカのコラから、アフリカ系アメリカ人のジャズ/ゴスペル的表現へと一本の歴史線が引かれるように聞こえます。


11. Meeya — 「誰かを恋しく思うこと」

Meeya = Missing Someone

ここまでの政治的・社会的テーマから少し離れ、より個人的な感情へ。

誰かがいないこと、その人を思うこと。

ギター、ベース、コンガ、ブラシ、ドラムを中心とした比較的柔らかな編成です。

アルバム全体が大きな社会問題だけで構成されているのではなく、一人の人間の喪失感まで同じ地平で扱っていることが分かります。


12. Taariko — 「歴史」

Taariko = History(歴史)

最後を「歴史」で終わらせるのが、このアルバムの思想を象徴しています。

Zihirina Abdoulahi Maigaをヴォーカルに迎え、コラだけでなく、ンゴニ、チェロ、ギター、カラバッシュ、ジェンベまでソナ自身を中心に組み上げています。

テーマは、自国の歴史的建造物や文化を放置する一方で外国の文化ばかりを価値あるものとして見ることへの警告。

文化財の略奪や、外部によって作られた歴史観にも触れ、

自分たち自身の歴史を知り、守り、祝福しよう

というところに到達します。

したがってこれは単なる最終曲ではありません。

「未来を作るには、まず自分たちの過去を取り戻さなければならない」

というアルバム全体の結論になっています。


このアルバムの流れ

12曲を通して聴くと、かなり明確な構成が見えてきます。

女性 → 芸術家の責任 → 団結 → 伝統 → 若者と教育 → 戦争 → 人間性 → 故郷 → 自分の声 → 祖先と精神 → 個人的な喪失 → 歴史

という流れです。

特に

Fondinkeeya → Kafaroo → Ubuntu → Gambia → Nna Kangwo → Nna Mooya → Taariko

という後半は、教育・戦争・人間性・祖国・声・祖先・歴史が一本につながっています。

その意味でこれは、曲を集めたアルバムというより一冊の本に近い作品だと思います。


Notionプロパティ

プロパティ内容
アルバム名Badinyaa Kumoo
カタカナバディニャー・クモー
アーティストSona Jobarteh(ソナ・ジョバルテ)
リリース日2022年9月23日
年代2020年代
国・地域ガンビア/イギリス
文化圏西アフリカ/マンデ文化圏
ジャンルワールドミュージック/マンデ音楽/アフリカ音楽
スタイル伝統音楽+現代アフリカ音楽/アフロ・フォーク
主要楽器コラ、ギター、ベース、バラフォン、ジェンベ、サバール、カラバッシュ
ヴォーカルあり
曲数12曲
時間約72分
レーベルAfrican Guild Records
主要テーマ教育、女性、植民地主義、歴史、アイデンティティ、戦争、人間性、アフリカ
ゲストYoussou N'Dour/Ballaké Sissoko/Kirk Whalum/Ravid Kahalaniほか
おすすめ曲Musolou/Fondinkeeya/Ubuntu/Nna Mooya/Taariko
雰囲気力強い/瞑想的/生命力/社会的/祈り/歴史的
おすすめ度★★★★★
タグ#ガンビア #西アフリカ #コラ #マンデ #グリオ #アフリカ音楽 #教育 #歴史 #脱植民地化 #ワールドミュージック
一言メモコラの伝統を過去に保存するのではなく、教育・植民地主義・女性・戦争・歴史など「現在のアフリカ」を語るために使った作品。

特にこの作品は、これまで聴いてきた宗教音楽とは別ルートで「音楽が思想や歴史を語る」面白さが非常に強いアルバムです。「Fondinkeeya」の教育論と、最終曲「Taariko」の歴史論をセットで聴くと、ソナ・ジョバルテがなぜ演奏活動と同時に教育活動に力を入れているのかまで見えてきます。

Amazon Musicで『Badinyaa Kumoo』を聴く
Sona Jobarteh公式Bandcamp『Badinyaa Kumoo』



0 件のコメント:

コメントを投稿